ODした日の一週間前は、仕事が変則スケジュールに加え、臨時の仕事も舞い込んできて、ものすごく忙しかった。
 ODの直前の日記を参照してほしい(id:kenji902:20040316)。これは、ODの一週間前の3月16日に書いたものだ。

なんかね、普段の週の1.5倍ぐらいの仕事量こなしてる感じですわw 4分の3の日程でw

 というぐらいの忙しさだった。
 そのため、その日の日記に

 先週、今週と仕事で強いストレスを感じて、軽い鬱状態に。症状としては、「不安感」「憔悴」「寂しさ」。パキシルを飲むようになって、凹む度合いは軽くなったが、ちょいとヤバ目かも。一番ひどい時を100とすると20ぐらいなんだけどね。

 と書いてあるように、軽くではあるが、うつ状態に陥っていた。
 忙しさとストレスが合わさった結果がODに繋がっていったとも考えられる。
 しかし、これ以上の忙しさは以前の職場*1で味わっていたし、ストレスの方は、同程度かそれ以上の“追い込まれ感”は以前にも味わっているので、それだけではODするだけの動機としては物足りない。(日記を始める以前なので、状況などははっきり覚えていないが)



 もう一度、3月16日の日記を参照してみよう。
 すると、本質に近づきそうなキーワードが二つ出てくる。一つ目は

 このへんは、メッセ友への依存でなんとか乗りきってる気がする。

 こう書いてあるように、おいらは精神的にメッセに依存している。家族でいるよりも、嫁さんといるよりも、特定の相手とメッセしているときが一番落ち着いてしまうのだ。この“メッセ”という部分を“酒”に置き換えると、そのまんま重度のアル中だ。
 なぜ、重度のメッセ依存症になってしまったか振り返ってみようと思う。
 もともと数年前までは「自分を理解してくれる人がいない」と考えていた。しかし、いまの職場での出会いで「こんな自分でも理解してくれる人がいる」と思えるようになった。
 “自分を理解してくれる”それはものすごい快楽だった。家族や嫁さんを顧みず、その“理解してくれる人”といつまでも喋り続けた。毎晩のように夜遅くまで喋っていた。
 それをきっかけに、おいらの他人への依存が強くなっていった。
 だが、それは長く続かなかった。その人は仕事を辞め、島を出て行ったからだ。
 おいらには立派な配偶者がいた。子供もすでにいた。しかし、嫁さんは、おいらが精神的依存ができるタイプでは無かった。
 依存の心地よさを覚えたおいらの前から、依存相手が全くいなくなってしまった。そのため、ふさぎ込む日々が続く。
 半年ぐらいたったとき、軽い気持ちでいわゆる“出会い系サイト”にはまっていった。当時は大手の無料出会い系サイトがあり、いまとはすこし雰囲気が違い、単純な友達探しを目的とした人も多かった。
 おいらがやったことは、“疑似恋人さがし”だった。
 おいらにとっての依存相手とは、「価値観を共有でき、互いを認め合う」である。しかし、そんな相手が簡単には見つからないのは、当たり前のことで、当時の自分も分かっていた。
 しかし「価値観の共有、互いを認め合う」これを簡単にしてしまう方法があった。“恋愛”だ。恋愛関係だけに視野を狭めれば、恋人という時点で、「価値観の共有と互いを認め合う」のはクリアしてしまう。この狭い価値観の共有におぼれ始めていた。
 人として理解し合うことをないがしろにし、「好きだ、愛してる」という言葉に依存していた。当然、そんな刹那的な関係は長続きしない。3年ぐらい前の話だ。
 大手出会い系サイトが有料化したこともあり、おいらの依存相手探しも落ち着いていった。
 それからは、2ちゃんねると趣味に没頭するようになった。こんどは2ちゃんねるを経由して友達が増えていった。この時点では、趣味と不特定多数によるチャットに激しく没頭し、依存したい気持ちを追いやっていたとおもう。その時知り合ったメンツとは、いまでもそれなりに仲が良い。
 そこで、大げさな言い方になるが、「人生が変わる」ほどの人物との出会いがあった。意図せずして、恋愛を抜きに「価値観の共有と互いを認め合う」ひとと出会ってしまった。
 であって“しまった”と書いたが、おいらはいままでの人生で一番の親友とまで思っている*2
 その人を中心としたメッセに依存するようになって今に至る。
 さて、この文章の本題は「なぜODに至ったか」だ。メッセで依存できる相手が見つかって、「メッセ友への依存でなんとか乗りきってる気がする。」と日記にも書いてあるではないか。メッセ依存だけではODをしてしまった理由としては弱い。



3月16日の日記から拾い出せる、もう一つのキーワード。

 つかね、仕事がせっぱ詰まってくると、その分、息抜きの時間も長くなったりw

 これは、仕事に行き詰まったり、いっぱいいっぱいになってくると、思考回路が低下し、現実逃避をしてしまう。
 この現実逃避は、仕事中の2ちゃんねる観覧という形で出てきてしまっている。
 このことを、2週間ぐらい前に上司にカミングアウトしたら「あなたぐらいの知性の持ち主なら、仕事に行き詰まったときに解決法が考えられるはずだ」と言われた。言われてみれば、その通りである。しかし、おいらはいっぱいいっぱいになってくると、とたんに思考能力が低下する。そして、中毒者のように2ちゃんねるに没頭してしまう。すでに“中毒者のように”ではなく、中毒者そのものだ。
 しかし、この件も直接ODにはつながりがあるようには見えない。



 話の視点を変えてみよう。
 ODは自分の体のために薬を飲むのではなく、体によくないと分かっていて飲んでしまうので、自傷行為とみられる。
 死なない程度に手首を切るリストカットに近い。
 これまでおいらは、自傷行為をするという自覚はなかったが、2ちゃんねるメンタルヘルス板などを流し読みしていると、「つめを噛む」「かさぶたを剥がす」なども自傷行為に含まれることがあるという。おいらも当てはまる。また、ささくれをむいたり、吹き出物や角栓は絞りだしてしまう。
 つめを噛むのは小学生ぐらいから続いている気がする。小学校3年生ぐらいの時の自分は、学校についていけず、「自分はおちこぼれだ」と、すでに考えていた。忘れ物も多かったし、宿題もしなかったので、当然といえば当然ともいえる。余談だが、今から思えばアスペルガーやADD(ADHD)の傾向だったかもしれない。そのせいか、手のつめを爪切りで切ったことはほとんど無い。
 また、ささくれも、血が出ていたいのが分かっていて、ついつい引っ張ってしまう。時には、カッターでささくれを綺麗にそぐこともある。
 しかし、リストカットに比べれば軽症だ。


 ある日、ふと考えた。
 自分を傷つける行為が自傷行為ならば、それは、肉体に対してだけではなく、自ら精神を傷つける行為も自傷行為なのではないのか。
 すると、いままでの話が一本の糸で繋がる。
 おいらは、いままでずっと、自尊に対して自傷行為を繰り返してきたのではないかと。それは、同時に逃避行動でもあると思う。
 おいらはそれなりの能力を持っていると自負している。
 しかし、自分の能力をフルに発揮しているとは思えない。「能力をフルに発揮した高レベルの自分」というのは単なる想像の産物かもしれず、実際は過大評価だという劣等感も併せ持っている。
 仕事でせっぱ詰まって余裕が無くなると、“高レベルの自分”からほど遠くなってしまい、「自分はダメな人間だ」と卑下をしてしまう。
 その状態で「能力を発揮している」を目指すのは耐え難い苦痛だ。その苦痛から逃れるために、自傷的に自尊心を破壊し、「おいらは仕事をさぼるダメ人間」というレッテルを自分自身に貼る。
 そしてどんどんダメ人間化が進む。
 メッセに没頭するというのも同じだ。家族や身近な人との対話を拒否し、メッセやネットに没頭して、ネットの世界に自分の居場所を求めようとし、現実世界の自分自身の自尊心を傷つける。そして、「自分はダメ人間だ」というレッテルをはり、「ダメ人間だからダメなことしかできない」と、あきらめの境地で“安心する”。
 自分自身を傷つけて安心してしまうのだ。それは、「能力を発揮する自分」を目指さなくても良いという安心感なのだ。
 それでは、なにも生み出さない。それどころか、どんどんと壊れてダメ人間化が進むだけだ。おいらにとってのODとは、何かの結果ではなく、ダメ人間化していく過程の一つだったのではないのだろうか。
 ストレスや過労は、ダメ人間化へ逃げるきっかけにすぎなかったのだろう。
 いまなら思えることなのだが、「能力を発揮する自分」の想定レベルを下げれば、わざわざ自尊心を傷つけてダメ人間化を進めることは無かったように思えるが、自分の自意識過剰によって、想定レベルの引き下げが困難なのも、ダメ人間化の要因にあると思う。



 おいらがODしたのは、ダメ人間になるという形で、自尊心への自傷行為という、負のスパイラルの通過点だったと考えられる。
 この「ダメ人間スパイラル」を抜出すのは、並大抵なことではない。最近の自己分析から、軽症ながらも、軽度発達障害と呼ばれるカテゴリ(自閉症スペクトラム)のアスペルガーやADD(ADHD)といった障害を持っている可能性を感じるようにもなっている。これらと向き合いながらも、安易にダメ人間化しないように自分自身をコントロールし、また、そのためにも、自分自身を認めてあげるということも必要になってくる。
 仕事の休職もまもなく終了するがダメ人間スパイラルからの脱出ができるかどうかは正直分からない。
 しかし、この一連の*[ODの謎]の文章が脱出のきっかけになれば、と考えている。

*1:SEという名のプログラマー

*2:ここまで書くと恥ずかしい(ノ´∀`*)